ここでは、僕が創った小説を公開しています。

最強無敵グレンブライ

解説
▼アマチュア時代、数人の友人とサークルを作っていました。ある声優のファンサークルでした。その声優がヒロインの一人として出演していたゲームソフトがあります。 「ときめきメモリアル」というタイトルです。そのゲームのヒロインの一人「虹野沙希」をメインに据えたアンソロジー小説、それがこの「最強無敵グレンブライ」です。
 当時から今に至ってもロボットものが好きな僕が書き始め、サークルのメンバーとリレー形式で創っていくという形式でした。全4回で、1回目と3回目は僕が書いたのですが、 原稿は第1回以外は紛失してしまっています。で、唯一残っている第1回をここに発表します。
 もう10年以上も前に書いたものです。近年「グレンラガン」というアニメがヒットしていますが、その遥か昔に似たようなタイトルが付けられたロボット小説です。 パクったものではありません。誤解なきようにお願いします。
 なお、現時点で続きを書くことは考えていません。


キャラクター紹介
●芦田雄悟:きらめき高校サッカー部に属しレギュラーで活躍している、この小説の主人公。数ヶ月前に修学旅行で訪れた北海道で紐緒結奈と共に宇宙人と戦った経験がある。 虹野のことが好きだが言い出せずにいる。
●虹野沙希:きらめき高校サッカー部のマネージャーで、この小説のヒロイン。雄悟とは両想いだがお互いそれを知らずにいる。
●紐緒結奈:きらめき高校のクールービューティーにしてマッドサイエンティスト。将来の夢は「世界征服」。そのための世界征服ロボを建造したが、謎の宇宙人との戦いで大破、 自らも重症を負い、世界征服ロボ2号機を雄悟に託し、宇宙人と戦わせようとする。


プロローグ

 それは秋の深夜。秋とは言え、今夜は少し暑いくらいだ。都会から遠く離れた、誰も人のいない草原。そこに対峙する2つの巨体。
 一方の蒼い巨大ロボット「世界征服ロボ」の操縦席。さほど広くないこの空間に少女−−というほどの幼さはない、むしろ女性と言った方が適切だ−−がいる。 紐緒結奈−−それが彼女の名。
「この私に挑戦してくるとはいい度胸ね。褒めてあげるわ。その代わり命の保障は無いわよ。覚悟しなさい、インベーダー!」
 モニターに映っている敵。有機物とも、無機物とも判断のつかないモノに向かって結奈は左手の中指を突き立てた。コンピューターがその動作をトレースして世界征服ロボも 同じポーズをとる。

 グゴゴガガガゴゴォ!

 敵は咆哮を上げる。見くびられているのが分かったのだろう。その表情は憤怒に歪んでいるように見える。
「受けてみなさい! 世界征服ビーム!」
 世界征服ロボが目からビームを放ったその刹那、敵も口から熱戦を放った。強烈な衝撃が結奈の意識を奪った……。

第1話 ロボに乗りなさい

 結奈が目覚めて最初に目に入ったのは白い天井だった。いや、刺して来ている夕焼けのおかげで、ややオレンジ掛かっている。
「あ、気が付いた?」
 結奈が首を動かすと、その声の主、虹野沙希が椅子に腰掛けていた。
「虹野……さん?」
 結奈は飛び起きて沙希の肩を掴み、強く揺すった。
「ここはどこ!! どうして私はここにいるの?! あなたがどうしてここにいるの?!」
「お、落ち着いて紐尾さん!」
 沙希の言葉で結奈は一気に冷静になった。
(フ、私としたことが……)
 己を嘲笑する結奈。そして沙希はゆっくりと説明を始めた。
「あのね……」

 話は3日前に遡る。その朝、沙希はサッカー部の朝連の準備のために、他の部員よりも早く学校へと向かっていた。
「今朝はなんだか凄く涼しい。もう秋も終わりだもんね、当たり前か。でも何となくだけど、今日は何かが起こりそうな……そんな気がするなぁ。彼、早く来ないかな」
 そう言ってクスッと一人微笑んだ沙希は校門の前に何かを見つけた。
「あれ? なんだろう」
 沙希は校門に駆け寄った。人だ。誰か人が倒れている。
「紐緒……さん?」
 沙希は自分の顔から血の気が引いていく音がしたような気がした。
「大変! 救急車呼ばなくちゃ!」

「そうだったの……」
 世界征服ロボには緊急瞬間移動システムのプログラミングが施されている。パイロットの身体、あるいは生命に及ぶ危機を感知すると、自動的にパイロットを安全地帯に転送し、 自らも格納庫へとテレポートする。だが、機体に相当の負荷がかかり、一切の稼動が出来なくなってしまうという弊害も起こってしまう。そうして結奈は人里はなれた草原から、 きらめき高校の校門前に転送されたのだった。
(私の作品はいつも予定通りの成果を上げる。フフフ……やはり私は天才だわ)
「あの、紐緒さん?」
 沙希の声で、自分の世界へと入っていた結奈はふと我に返った。その時、ドアをノックする音がした。
「どうぞ」
 その声を聞いてから病室に入ってきたのはサッカー部のフォワードにしてエースストライカーとなりつつある少年。名を芦田雄悟という。
「あ、紐緒さん、気が付いたんだね、良かった」
「芦田君……」
 雄悟のことはよく知っていた。春先のデスティニーランドでのダブルデート(結奈にその意識があったか否かは謎だが)や、世界征服ロボの設計図を見られたりと色々あった 人物なのだ。まだ1年生だった頃、自分の出したそこそこ難しい問題をいともあっさり解いたのも、はたまた爆発実験のモルモットとなったのも雄悟だった。
「あ、虹野さん、これ、コーチからの伝言。それからこれは約束の……」
「うん、ありがとう」
 そんなやりとりを交わす二人が実に幸せそうに見えた。結奈は一瞬複雑な思いで二人を見ていた。
「幸せそうね……」
「え?」
 雄悟と沙希は同時に結奈を見た。『幸せ』などという単語が結奈の口から出るとは思っていなかったのだ。二人の顔が見る見る紅潮していく。窓から射す陽光よりも赤い。
「や、やだ、紐緒さん」
「何よ?」
「わ、私、花瓶の水換えてくるね」
 沙希はまるで逃げるように病室から出て行った。
「ああ、びっくりした。やっぱりそういうふうに見えるのかぁ。フフッ」
 廊下を軽い足取りで歩きながらつぶやく沙希。彼女の周りにはピンク色のハートが数多く浮かんでいたに違いない。

 二人きりになった病室で雄悟は少し落ち着けずにいた。ダブルデートの一件以来、なんとなく気まずく思っていたのだ。どうしたものかと考えていると、結奈が口を開いた。
「いつまでそうやって突っ立ってるつもり? 座ったら?」
「う、うん……」
 雄悟は言われるがままに椅子に腰掛けた。
(何か話さないと)
 そう思い、口を開きかけた瞬間、結奈の口から信じられない言葉が発せられた。
「あなた、世界征服ロボに乗りなさい」
「は? 世界……何?」
 結奈の語気がやや荒くなる。
「何度も言わせないで。世界征服ロボに乗るのよ。そしてインベーダーと戦うの。こないだの修学旅行で見たでしょう? 私と宇宙人が戦ってるところを。そしてあなたも……」
「あ……ええっと……」
 そう、雄悟はその場に居合わせたのだ。だが雄悟は何もなかったことにしていたのだ。昼間の自由時間は風邪を引いて寝こんでしまった沙希の看病をしていた。少々不謹慎だが、 自由時間を二人だけで過ごせたことが嬉しくて幸せだった。そこまでで終わっていれば良かったのだが、その夜、結奈に連れ出された北海道の原野で雄悟は信じられない光景を 目の当たりにした。結奈は自作した兵器で宇宙人と戦い勝利を収めたのだ。
(宇宙人なんかいるワケがない!)
 そう思いたかったのだ。
「残念ながら世界征服ロボ1号機は、こないだの戦闘の影響で今は戦闘不能、忌々しいったらないわ。おまけに私もこんな状態だし。無理をすれば戦えなくもないけど、 こんな事で万一取り返しの付かないことになっては将来の地球の支配者どころではなくなるの。だからあなたが世界征服ロボ2号機に乗って戦うのよ。私の代わりにね」
 そこまで一人で喋ると結奈は枕元のカバンに手を伸ばし、中からCGで描かれた1枚のイラストを取り出して雄悟に差し出した。そこには紅のロボットが。
「それが世界征服ロボ2号機よ」
 数秒後、雄悟は絞り出すように声を出した。
「じょ、冗談でしょ?」
(未完)




結城偈斗の世界・部屋表のページに戻る

作品タイトルのページに戻る

メインページへ戻る

Contentsのページに戻る